LEAF Vol.21 やっぱり「本」が好き!

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やっぱり「本」が好き!
LEAF Vol.21
fromヤングアダルトコーナー

ゲームに携帯、インターネット。
楽しいものはたくさんあるけど、
やっぱり“本”を読むのって楽しい!!
そんなあなたに贈る、
“本”にまつわる特集だよ。

ラ・のべつまくなし

壱月 竜一 著 小学館 検索 
「文豪」と呼ばれた祖父と同じ、“純文学”の道を志す矢文学(やぶみまなぶ・通称文学(ぶんがく))。
だが、志とは裏腹に、ラノベ作家としてデビューし、その上、大ヒットしてしまった彼。
目指していたものと異なる方向性に、初めて書く動機を見失い、続編の執筆がままならなくなった文学は、
気分転換に出かけた、お気に入りの図書館で、一人の少女と出会う。
一目見たときから、文字通り、その少女・明日葉に一目惚れした文学。
しかし、明日葉は、文学の作品を愛する腐女子で、そして文学は、漫画的な絵を三秒見続けてしまうと気絶する、極度の「二次元アレルギー」の持ち主だった!
 恋愛経験ゼロのカタブツとフジョシが織り成す、山あり谷ありの「純愛物語」。

ファンタージエン 秘密の図書館

ラルフ・イーザウ 著 酒寄 進一 訳 ソフトバンククリエイティブ 検索
「いつかまた、別のときにはなすことにしよう」
ミヒャエル・エンデが、『はてしない物語』の中で、こう書き記していた、いくつもの「別の話」が語られる「いつか」がやってきた。
複数のファンタジー作家やミステリー作家達による『はてしない物語』へのオマージュ、『ファンタージエン』シリーズ。
この中で、エンデの秘蔵っ子と言われるラルフ・イーザウが手がけるのは、『はてしない物語』の冒頭で、バスチアン少年が逃げ込んだ古本屋の主人・カール・コンラート・コレアンダー氏の、若き日の冒険譚だ。
古本屋の求人広告を見て、店を訪れた瞬間、青年カールの冒険が始まった。
エンデが全てを語ることはしなかった「ファンタージエン」という世界。
かつてその世界に入り浸っていた若い作家が、語り、遊ぶ「語られなかった物語」を存分に楽しんで欲しい。

「ライトノベルの楽しい書き方」シリーズ

本田 透 著 ソフトバンククリエイティブ 既刊5巻 検索
まずはじめに。タイトルは、「書き方」となってはいるけれど、こちら、小説の書き方を記したハウツー本ではなく、王道ラブコメなので、おまちがいなく。
高校入学から2週間ほどがたったある日。与 八雲(あたえ やくも)は、クラスメートの流鏑馬 剣(やぶさめ つるぎ)に、息の根を止められそうになっていた。
原因は、文武両道で才色兼備だけれど、目つきは鋭く隙が無く、ただならぬ迫力で、いかにも「ザ・武士」といった感じの彼女の秘密を知ってしまったから。
学園最強と呼ばれる彼女が、実は、中学時代にデビューを果たした、らぶりぃでふぁんしぃなライトノベル作家・姫宮 美桜(ひめみや みお)だったという秘密を(ついでに、彼女が実は、かわいいものが大好きでポエマーだったという秘密も)。
決して秘密をもらさないと誓うことで、危うくあの世行きを免れた八雲だったが、八雲のイトコで剣の担当編集・心夏(ここな)の依頼(というより命令)で、姫宮美桜の次回作・学園ラブコメ執筆のため、恋愛経験ゼロの剣と、一ヶ月の疑似恋愛を繰り広げる事に!?

番線 -本にまつわるエトセトラ-

久世 番子 著 新書館 検索
マンガ家兼元書店員・久世番子が、贈る「本好き」による「本好き」のためのエッセイコミック!
同じような本好きとの、あるいは、そうじゃない人との、本の貸し借りにまつわる話や本好きなら誰でも経験があるだろう、本棚に収まり切らない本との格闘「ザ・収納」に関する話など、自らや周囲の本好きたちの生態を面白おかしく描いたり、写植職人や国会図書館といった、本と関係の深い職場への潜入を図ったりと、副タイトル通り、本にまつわるアレコレが綴られている。
「我こそは本好きだ!!」と言い切る人に、我が身と見比べながら楽しんでほしい。
著者が書店員時代に出した、本屋の裏側全部見せます!的エッセイコミック「暴れん坊本屋さん〈全3巻〉」も一緒にどうぞ。

魔法の声

コルネーリア・フンケ 著 浅見 昇吾 訳 WAVE出版 検索
小さい頃、絵本や童話を読みながら、一度は想像しなかっただろうか?
本の登場人物が、その本から抜け出してくる姿を。
本が大好きな少女・メギーの父親モーは、本の修繕を仕事にしており、二人はメギーが物心付いた頃から、住まいを点々とする生活をしていた。
そんな彼らの前に、ある雨の夜、一人の男が現れる。
「ホコリ指」という不可思議な名の男の登場により、メギーの、大好きな本に囲まれた楽しい生活は一変した。
メギーにはそれまで秘密にされていたが、モーは、朗読した本の登場人物を現実世界に呼び出してしまう魔法の声の持ち主で、9年前、ある本の登場人物たちを偶然呼び出してしまったとき、代わりにメギーの母親がその本の世界へと消えてしまったのだった。
本の世界に戻りたくてモーを捜し歩いていた「ホコリ指」は、その時本の世界から呼び出された邪悪な男「カプリコーン」が、現実世界で悪事を働く為に、モーとメギーにその魔手をのばしつつあることを知らせた。
各章の始めには『指輪物語』、『ピーター・パン』、『かいじゅうたちのいるところ』など、お馴染みの物語が、効果的に引用されていて、本の世界へと読者を誘ってくれる。
ハリー・ポッターシリーズのような派手さは無いが、本の登場人物を呼び出せる声、であったり、本が大好きな主人公、だったり、本への愛がひしひしと感じられる、まさに、本好きに贈るための本とも言うべき物語。
シリーズ全3巻(予定)の第1冊目。
1.魔法の声
2.魔法の文字

記憶の国の王女

ロデリック・タウンリー 著 布施 由紀子 訳 徳間書店 検索
「本が開くぞー」、この掛け声と共に、本の登場人物たちは、それまで休憩していたページの隙間や、散策していた物語の場面から、開かれたページや自分が登場するページへ飛んで戻り、何十回、何百回と繰り返された物語を演じ始める。
主人公の王女・シルヴィは、『とてもすてきな大きなこと』という物語のヒロイン。けれど、彼女たちの物語を楽しんでくれた読者がいたのも遠い昔のこと。
彼女たちが生きる本は、もうずっと開かれず、誰にも読まれないまま、時だけが過ぎていた。
だがある日、あの声が響き渡った。
「ほぉぉぉぉんが開くよ!開くよぅぅぅぅ!」
シルヴィが規則を破って本から見上げた、久々に現れた読者は、栗色の短い巻き毛の女の子。
彼女は、昔この本の読者だった藍色の目をした少女のように、毎日何度も本を開いてくれるようになった。
だが、あまりに長いこと放置されていたシルヴィは、持ち前の好奇心と行動力を発揮して、ある日、本を開いたまま寝てしまった女の子の夢の中へと飛び込んでしまう。
もし、あなたの本棚の奥に、昔お気に入りだった本が、埃だらけになって眠っていたら、ちょっと引っ張り出して開いてあげて欲しい。
本は、読む人がいてこそ、『本』としてあることができるのだから。

Petit Book Recipe リトルプレスの作り方

yojohan 著 毎日コミュニケーションズ 検索
「お菓子を作るように本を作ろう!」をキャッチコピーに自分らしい本を作ろう!その方法を教えるよ!な本。
本書で作ろうとしている本は、いわゆる単行本・文庫本と言った、一般的に「本」と呼ばれるたぐいのものではなく、個人や団体が独自に発行する、小部数や手製本などの小冊子だ。
ただし、ちゃんとした「本」じゃないからと、決して手は抜かないし、ただ「かわいい!」だけでお茶を濁さない。
そんなかわいい本を作るための下準備をとても大事にしている。
アイデアをひたすら練って、コンセプトの通った本のレシピを作る重要性や、素材の集め方から、その素材を有効的に使う小技、さらに、全てを手作業でやろうとする場合と、印刷所に発注する場合との両方に対応するノウハウなど、実務的な裏方作業を、きっちり手順を踏んで紹介。
実際自分で作る、までいたらなくても、かわいい本を楽しそうに作っている様子が眼に浮かび、眺めているだけでも楽しめる本だ(でも、作ったら、大変だけれど、もっと楽しいんだろうね)。
本好きサンと物作り好きさん達に、ぜひ手にとってもらいたい。この本を読んで、あなたならどんな本を作る?

まだ名前のない小さな本

ホセ・アントニオ・ミリャン 著 安藤 哲行 訳 晶文社 検索
最近、国や電車など色々な物が擬人化されている流行りにのって、「本」が擬人化された、かわいらしいお話を紹介しよう。
主人公(主本公?)は、まだ「むかしむかし」と「おしまい」の2行しか書かれていない、本。
中身が無いので名前(題名)もまだ無く、みんなからは"ちっちゃなお話"とだけ呼ばれている。
学校では、習字やデッサン、16の段の掛け算(本は16ページ単位で大きくなるので必修科目なのだ)などを勉強していて、簡単な文章や、挿絵が増えてきた友だちもいるのに、"ちっちゃなお話"はいつまでたっても"ちっちゃなお話"のまま。
卒業の証「まるC」のマークは、まだまだ貰えそうにない。
そんな、なかなか大きくならない"ちっちゃなお話"の事が、お父さんの「民法書」とお母さんの「科学雑誌」は、心配でならない。
元軍人のおじいちゃん「戦術、戦略と作戦」とおばあちゃん「若い女性の友―礼儀作法読本」は、孫が小さいのは当たり前だと、とやかく言うことも無く"ちっちゃなお話"を可愛がってくれるけれど、両親の気がかりに気付いた"ちっちゃなお話"は、ある日、お手伝いさんの「クッキング・ブック」のすきを見て、何でも知っているという「百科事典」のもとへと、たった一人で出かけていく。
棚から棚へと繰り広げられる"ちっちゃなお話"の大冒険、かわいらしいイラスト共に、是非「本好きさん」に楽しんでほしい。

メニューにない本ください!

フェリシモ出版 検索
学校図書館司書と国語教師の3人が手を組み、「こんなに面白いのに何故かあまり知られていない」と思われる本を選び、紹介している。
いわゆる、定番の本はあえて外した作りだ(とは言え、本書の発行が2003年のため、年月とともに今では「定番」になってしまった本もあるが)。
"かっこよく駆け抜けろ""ここではないどこかへ""一難去ってまた一難"など、ちょっと心惹かれるキャッチフレーズごとに、数冊の本を紹介。
紹介されているのは、物語本が多いが、フィクションはあまり好きではない、という硬派なあなたの為に、科学読み物や伝記、歴史物語など広いジャンルの本が扱われている。
あなたが惹かれたキャッチフレーズから、今読むのにぴったりの本をピックアップしていくといいかもしれない。
各本ごとに、ちょっと書かれた、著者の裏話やその作品にまつわる情報も楽しい。

図書館で出会える100冊

田中 共子 著 岩波書店 検索
長年公共図書館に勤めた著者が、その経験を生かし、膨大な数の書籍の中から、長く読みつがれてきた選りすぐりの100冊を紹介してくれる。
ぱっと見、地味で固そうな本が並んでいるように見えるかもしれないが、試しに興味がそそられた本を何冊か読んでみて欲しい。
きっとあなたの「おもしろい本リスト」の欄が増えるから。
そして、「もっと面白い本を!」と思う人は、本書の「はじめに」で書かれている「おもしろい本との出合い方」を参考にしてみよう。

萌えで読みとく名作文学案内

牧野 武文 著 インフォレスト 検索
本を読むのは好きだけど、「名作文学」と言われると、それだけで腰が引けてしまうあなた。この本をとっかかりに、「名作文学」への扉を開いてみてはどうだろう。
この本では、国内外の24の名作とよばれる文学作品を取り上げ、各作品に潜む「萌え」要素を、作者が抽出し紹介している。
谷崎潤一郎の『痴人の愛』は、「育てゲー大失敗の巻」である、とか、「ロリータ萌え出会い系一人旅」の川端康成作『伊豆の踊り子』などなど。
ざっと目次を眺めるだけでも、「名作文学」の垣根が、ちょっと低くなる。
著者の巧みな考察を読めば、垣根はもっと低くなるだろう。
長年「いい作品」と言われている物語たち。
読まず嫌いに終わらせず、この機会にひょいと垣根を越えてみたら、新しい読書世界がひろがるかも。

〈本の姫〉は謳う

多崎 礼 著 中央公論新社 全4巻 検索
かつて、「文字の精霊」の力で天に浮んでいた楽園で、繁栄を極めた天使たち。
だが、「滅日(ほろび)」と呼ばれる大災厄の日、楽園は、浮力を失い地に堕ちたと言い伝えられる。
その時、大陸中に散らばってしまった、「文字(スペル)」は、世界に邪悪な影響を及ぼす存在だった。
物語は、そのスペルを回収するために、意志を持つ本〈本の姫〉を携えて、大陸中を旅してまわっている少年・アンガス(と愉快な仲間たち)の物語と、滅日以前の、空に浮かぶ楽園で生まれ育った天使『俺』の物語が交互に語られる。
今の物語と過去の物語。
二つの、全く別の話に見えたものが、やがて少しづつ重なって行き…。
魅力的なキャラクターや、緻密な構成・展開もさることながら、なにより心惹かれるのは、この世界の特殊な「本」の設定。
文字を読むのではなく、「スタンダップ」の呪文と共に本を開けば、その読者にイメージとして物語を見せる。
優れた作者の作品である程、そのイメージは鮮明で繊細な箇所にまで及ぶものとなっていく。
……これ、物語スキーが普段頭の中でやっていることよね?(笑)。
でも、そんな物語りスキーにとっては当たり前のことを、改めてこんな素敵設定に転換した作者に脱帽。