LEAF Vol.70 言葉を愛でる

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言葉を愛でる
LEAF Vol.70
fromヤングアダルトコーナー

文字をつないで言葉にし
言葉を紡いで文にする
文を連ねて何を語る?

きみと詠う

大平 しおり 著 KADOKAWA 検索
和樹は小六の夏休みに江ノ島で明日歌と出会い、二人は和歌について語り合いました。
その後、高校生になった和樹は和歌部がある江ノ島高校に進学します。
それは小学生の頃、一緒に和歌を習った明日歌に会えるかもしれないという淡い期待もあり。
しかしすでに和歌部は廃部になっていました。
気落ちした和樹でしたが、そこで明日歌との再会を果たします。
二人はメンバーを集め和歌部を復活させますが、今度は予算不足のため大会で優勝しないと再び廃部の危機に。
明日歌への思いそして部員たちへの思いをのせて、和歌の世界を突き進みます。

リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ

こまつ あやこ 著 講談社 検索
沙弥は佐藤先輩から、ギンコウに行くからついてくるようにと言われます。
ギンコウとは、銀行ではなく、吟行で、街に出て短歌を詠むということでした。
佐藤先輩は吟行のパートナーになってほしいというのです。
沙弥は戸惑いながらも佐藤先輩の誘いを受けますが、しだいに短歌を詠むことが楽しくなっていきます。
そんな時、佐藤先輩には以前、吟行のパートナーがいてそれは沙弥が思いを寄せる藤枝港とわかります。
でも、今、佐藤先輩と港はある誤解から別れてしまっていました。
沙弥はその誤解を解くために行動を起こします。

僕は小説が書けない

中村 航 著 中田 永一 著 KADOKAWA 検索
家庭内の問題が原因で何事にもネガティブな光太郎は、かつて書いていた小説も完成させられずにいました。
そんな光太郎でしたが、高校の先輩である七瀬のアドバイスで再び小説を書きはじめようと決意し文芸部に入部します。
その頃、生徒会から具体的な活動成果がない文芸部は廃部にするという達しがあり、存続の条件として「学園祭で冊子を発行すること」と言い渡されす。
光太郎は七瀬に対する恋心や失恋、家族にわだかまる問題などを乗り越え小説を完成させます。
これは物語を紡ぐことを通じて、光太郎の葛藤と成長を描いた青春小説です。

部活で俳句

今井 聖 著 岩波書店 検索
「ダンス部の顧問になってほしい」 と生徒に頼まれた教師が、部員不足の俳句同好 会とダンス部を合体させるという著者の実際の体験を基にしたストーリーが描かれてい ます。
しかしそれは最初の章のみで、次章以降は俳句の鑑賞や創作についての解説となります。
高校生の作った俳句が多数紹介され、また、現代の俳人を介して「写生」 (実物・実景を見てありのままに写し取ること)の技法を示したり、偉大な俳人の句を紹介 したりしながら、型にしばられず日常を写し取る著者の俳句創作の楽しみ方が語られています。
俳句は難しいものではなく楽しめるもの、昔の人が作ったものだけではなく、現代を生きる私たちが作り味わうものなのです。もしかしたら自分にも俳句は作れる、そしてこれまで以上に俳句を楽しく味わうことができると思わせられる本です。

使ってみたい武士の日本語

野火 迅 著 草思社 検索
現代の日本では使用されない、かつての侍が使用していた武士言葉、武家言葉と呼ばれるものがあります。
この本は武家社会で使われていた言葉の解説と使用例を記したものです。
聞いたこと、読んだことのある言葉から全く知らない言葉まで、193語の武士の言葉が選ばれていて、使用例に当たっては、藤沢周平、山本周五郎、池波正太郎、司馬遼太郎、宮部みゆき等の時代小説家の作品から引用されています。
時代小説に限らず時代劇や落語などを聴いていると意味がわからないまま聞き流してしまう言葉がありますが、その正しい意味や語源を知ることができ、また、江戸文化に触れる際のガイド本としても使えると思います。どうせならその意味をはっきりと認識し、できれば現在の生活で使ってみてはいかがでしょうという本です。

ときめく心

桔梗 亜紀 著 水曜社 検索
サブタイトルが「中学生の相聞歌」となっているこの本。
「相聞歌」とは、和歌の分類の一つで、おおむね恋の短歌を意味する。
公立中学校の国語教師である著者の授業の中で「作者は絶対秘密にする」「作った相聞歌は印刷して配ったり掲示板に貼りだす」という条件のもと、生徒たちが作った恋の歌。
クラス替えや修学旅行といった学生らしい景色の中にある、もだもだする恋心や、恋にまつわる希望や絶望を詠んだ、中学生たちの短歌。
きっとあなたにも共感できる歌があるはず。

文字禍・牛人

中島 敦 著 KADOKAWA 検索
精霊の存在が信じられる地、古代メソポタミアのアッシリア帝国で、大王から、文字の精霊についての研究を命じられた老博士。
研究の過程で、じっと文字を見ていると、だんだんそれが意味のない線の交差したものに見えてきたり(いわゆる「ゲシュタルト崩壊」だ)、文字を覚えると、眼が文字に食い荒らされて今まで見えていた遠くのものが見えにくくなったりと、文字による様々な弊害を見つけそれを文字の精霊の呪いだと断じる。
10ページ位の短い話の中で「文字」の持つ怖さが見事に描かれている。

春や春

森谷 明子 著 光文社 検索
「俳句甲子園」って知ってる?
正式名称は「全国高校俳句選手権大会」。
5人一組の高校生のチームが地区予選を経て、毎年8月に全国から愛媛県松山市に集まって繰り広げる、実在する俳句の全国大会だ。
幼馴染を探すために、俳句甲子園を目指して俳句同好会を立ち上げた藤ヶ丘女子高生の茜と、茜を応援するトーコを中心に、創作にこだわりを持つ瑞穂や、「音」に敏感な理香、「文字」にうるさい真名、ディベート向きな夏樹ら個性豊かな、でも俳句はほぼ素人な同好会メンバーが、同じく俳句は全くのド素人の顧問・新野に率いられ、全国大会を目指す!
五・七・五のたった17文字で表されるどこまでも深くて広い世界を楽しもう。

ずかん文字

技術評論社 検索
有史以来使われてきた文字は、300程しかないらしい。
しかもそれらは、わずか4つの文字を起源に派生しているという(この本の中に、4つの起 源からどの文字がどう誕生しているか を示した「文字の家系図」も載ってい るよ)。
本書では、文明のおこりととも に誕生した古代文字や、現在、世界 各地域で使われる文字を六十数種、 多くの図や写真と共に、わかりやすく 紹介している。
人類が、残したい何か、あるいは、伝えたい何かのために生み出した数々の文字を眺めながら、あなたが残したり伝えたい言葉は何か、誰に残したいのか、そんなことも考えてみたらどうだろう?

文豪中学生日記

小手鞠 るい 著 あすなろ書房 検索
文章を書くことが好きで、将来作家になりたい14歳の女子中学生・西城春希 は、新年初日に新しいことを始めようと、日記をつけ始める。
「パソコンは使わず手書きで書く」とか「ネガティブなことは書かない」などいくつかの決まりを作り、さらに 学校の授業で習った紀貫之の「土佐日記」をまねて、男になりきって書くことに。
文芸部のこと、友だちのこと、家族の風景など、小さな悩みはありつつも充実した日々が日記には綴られていたが、春希が自作の詩を投稿し始めた、詩の投稿サイトでのコメントをきっかけに、楽しい日常に影が差し始める。
やがて学校へも行けなくなって、日記からも遠ざかる春希だったが、そんな中で迎えた夏休み、父親の知人からの誘いで、ギリシャへの取材旅行に同行することになった。
その旅の途中で得た「すべての経験が作家の財産」の言葉が、立ち止まっていた春希の足を、一歩前へと踏み出させる。